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東京地方裁判所 平成11年(ワ)28682号・平12年(ワ)4111号 判決

主文

一  本訴原告(反訴被告)が別紙供託金目録記載の供託金還付請求権を有することを確認する。

二  本訴被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。

三  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、本訴被告(反訴原告)の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  本訴原告(反訴被告)

主文一項同旨

2  本訴被告(反訴原告)

本訴被告(反訴原告)が別紙供託金目録記載の供託金還付請求権を有することを確認する。

第二当事者の主張

一  本訴事件

1  請求原因

(一) 林時計工業株式会社(以下「林時計工業」という。)は、本訴原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し、次のとおりの約束手形(以下これらをまとめて「本件手形」という。)を振り出した。

(1) 金額   一〇〇〇万円

支払期日 平成一一年三月三一日

支払地  東京都豊島区

支払場所 株式会社第一勧業銀行池袋西口支店

振出日  平成一〇年一一月三〇日

振出地  東京都豊島区

振出人  林時計工業

受取人  原告

(2) 金額   四八五万五二〇〇円

支払期日 平成一一年四月三〇日

支払地  東京都豊島区

支払場所 株式会社第一勧業銀行池袋西口支店

振出日  平成一〇年一二月二五日

振出地  東京都豊島区

振出人  林時計工業

受取人  原告

(二)原告は、平成一〇年一二月二六日から同月二八日にかけて、本件手形を盗取された。

(三) 林時計工業は、別紙供託金目録記載のとおり、本件手形を喪失した原告と本件手形を取得した本訴被告(反訴原告。以下「被告」という。)のいずれが真の権利者であるか確知しえないとして、平成一一年六月二八日、本件手形の券面額及び各利息(合計一五〇五万一〇三二円)を弁済供託(以下「本件供託金」という。)した。

(四) よって、原告が本件供託金について供託金還付請求権を有することの確認を求める。

2  請求原因に対する認否

(一) 請求原因(一)は認める。

(二) 同(二)は不知。

(三) 同(三)は認める。

3  抗弁

被告は、第一裏書人を原告、第二裏書人を中条哲男(以下「中条」という。)、第三裏書人を有限会社創建興業(以下「創建興業」という。)、第四裏書人を平林英樹(以下「平林」という。)、第五裏書人を株式会社タニザワ(以下「タニザワ」という。)とし、第一ないし第五被裏書人欄がいずれも白地の本件手形を所持している。

4  抗弁に対する認否

本件手形の裏書が外形上連続していること及び被告がタニザワから本件手形の交付を受けたことは認めるが、被告が現在本件手形を所持していることは否認する。

5  再抗弁

中条、創建興業、平林、タニザワ及び被告は、いずれも、本件手形が盗取されたものであることを知っていたか、重過失によってこれを知らずして本件手形を取得したものである。

6  再抗弁に対する認否

いずれも争う。

二  反訴事件

1  請求の原因

(一) 本訴請求の抗弁と同じ。

(二) 本訴請求の原因(三)と同じ。

(三) よって、被告が本件供託金について供託金還付請求権を有することの確認を求める。

2  請求の原因に対する認否

(一) 請求原因(一)のうち、本件手形の裏書が外形上連続していること及び被告がタニザワから本件手形の交付を受けたことは認めるが、被告が現在本件手形を所持していることは否認する。

(二) 同(二)は認める。

3  抗弁

(一) 本訴請求の原因(二)と同じ。

(二) 本訴再抗弁と同じ。

4  抗弁に対する認否

(一) 抗弁(一)は否認し、同(二)は争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これらの各記載を引用する。

理由

一  本訴事件について

1  請求原因(一)及び(三)の事実は当事者間に争いがなく、甲三、一〇号証及び弁論の全趣旨によれば同(二)の事実を認めることもできる。

2  そして、抗弁事実のうち、本件手形の裏書が外形上連続しており、被告がタニザワから本件手形を取得したことは当事者間に争いがないので、中条、創建興業、平林、タニザワ及び被告らが本件手形上の権利を善意取得したと認められるかどうかについて検討する。

甲一号証の一、二、甲二号証の一、二によれば、本件手形の第一裏書欄の原告名義の裏書は、ゴム印によるものではなく、ワープロ文字によって記載されたものであると認められるし、その代表者印にも会社名の刻印はないのであって、株式会社が通常行う裏書と異なる不自然なものであることは一見して明らかであるし、右裏書欄に記載された原告の住所地の記載も間違っていることが認められる。

しかも、甲一一号証、乙五、八、九号証及び弁論の全趣旨によれば、本件手形の裏書人の一人である平林は、いわゆる盗難手形のブローカーで、本件手形を含む額面合計四七〇〇万円の約束手形(以下「本件盗難手形」という。)が盗難手形であることを知っており、平林を安藤巌から紹介された市村稔(以下「市村」という。)も、この事実を知った上で、タニザワの代表者である谷澤信夫(以下「谷澤」という。)に対して本件盗難手形を持込んだこと、谷澤は、平林とは全く面識がなかったが、市村がタニザワの関連会社の代表者であったことから、平成一一年三月四日、市村とともに平林に会い、同人がどのような人物で、どのようにして本件盗難手形を入手したのかについて全く確認することもないまま、本件盗難手形にタニザワの裏書をして、被告に割引を依頼することとしたこと、谷澤と市村は、同日、手形の割引等を業とする被告の代表者である山下行郎(以下「山下」という。)を訪れ、本件盗難手形の割引を依頼したこと、山下は、約束手形の明細等について整理しようとしたが、市村から、どうしても今日一七〇〇万円が必要であると言われ、右金額で本件盗難手形を割引くこととし、一七〇〇万円を市村の銀行口座に振込んだこと、山下も、谷澤がどのようにして本件盗難手形を入手したのかについて全く確認することがなかったこと、右一七〇〇万円については、一五〇〇万円を平林が、二〇〇万円を市村がそれぞれ取得したこと、その後の平成一一年六月ころ、タニザワが被告から本件盗難手形を買戻したことが認められる。

そうすると、本件手形上、盗難の被害者である原告から直接裏書譲渡を受けた体裁となっている中条から創建興業を経て平林に至る過程が正常な取引であったとみることはできず、これらの者は、本件手形をいずれも無権利者から悪意又は重過失によって取得したと認めるのが相当である。

また、タニザワが被告から本件手形を買戻しているので、いずれにしても被告は本件手形上の権利を喪失したものと認めることができるが、平林から本件手形の交付を受けたタニザワや、同社から交付を受けた被告において善意取得が認められるかどうかについてみても、本件手形の第一裏書欄の記載からして、本件手形の交付を受ける者としては右裏書が真正にされたものであるかどうかについて疑問を持ってしかるべきであるし、それまで全く面識ない平林から割引依頼を受けたというのであるから、本件手形や平林の権利関係についてより慎重に調査しようとするのが当然であると考えられる上、本件手形上の原告の記載が間違っていたことをも考慮すれば、タニザワや被告が、平林などに対して本件手形の取得経路について十分な説明を求めたり、原告や支払銀行等に対して照会等をするなどすれば、本件手形が盗難に係るものであることも容易に判明したものと認められるから、右のような確認を怠ったタニザワや被告には重大な過失があるというべきである。

3  以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件手形の正当な権利者は原告であると認められるから、本件供託金の還付請求権を有するのは原告であると認めるのが相当である。

二  反訴事件について

以上説示したところによれば、被告の反訴請求に理由がないことは明らかである。

三  以上によれば、原告の本訴請求は、理由があるからこれを認容し、被告の反訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 土田昭彦)

(別紙)

供託金目録

一 林時計工業が原告または被告を被供託者とし、債権者不確知を供託原因として平成一一年六月二八日東京法務局平成一一年度金第三六八四三号をもって同局に供託した一〇一四万七九四五円の供託金還付請求権

二 林時計工業が原告または被告を被供託者とし、債権者不確知を供託原因として平成一一年六月二八日東京法務局平成一一年度金第三六八四四号をもって同局に供託した四九〇万三〇八七円の供託金還付請求権

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